レモングラス(Lemongrass)

レモングラス(Lemongrass)

レモングラスは、葉や茎を軽く折るだけで、すっきりとしたレモンのような香りが広がるイネ科のハーブです。東南アジアの料理ではスープやカレーの香りづけに使われ、乾燥した葉はハーブティーとしても親しまれています。柑橘類のレモンとは別の植物ですが、爽やかな芳香を生む成分を含み、料理にも暮らしにも独特の存在感を添えます。

レモングラスの基本情報

名前・別名
レモングラス、レモンソウ
学名
Cymbopogon citratus (DC.) Stapf
科名・属名
イネ科・オガルカヤ属
原産・分布
キュー植物データベースではインド南部・スリランカを自然分布域とする。熱帯各地で栽培
使用部位
主に葉、茎の根元に近い葉鞘
開花期
栽培地の気候によって異なり、栽培下では開花が少ないこともある
主な成分
シトラール(ゲラニアール・ネラール)、ミルセンなどの芳香成分
主な利用
スープ・カレー・炒め物の香りづけ、食品用乾燥葉のハーブティー
注意点
硬い葉や茎は取り除く。精油の飲用を避け、妊娠中や服薬中の濃縮利用は相談

レモングラスとはどんな植物?

レモングラスの代表的な食用種は、学名を Cymbopogon citratus (DC.) Stapf といいます。イネ科オガルカヤ属に属する多年草で、株元から細長い葉が束になって伸びます。英国王立植物園キューの植物データベースでは、この種の自然分布域をインド南部とスリランカとしています。現在は東南アジアをはじめ、熱帯・亜熱帯の広い地域で栽培されています。

草丈は栽培条件によって大きく変わり、葉は長く、縁が鋭いことがあります。食用に使うのは主に葉と、根元に近い太く白っぽい葉鞘の部分です。植物の分類上、レモンの果実をつけるミカン科の樹木とは関係がありません。名前に「レモン」と付くのは、葉に含まれる芳香成分によるものです。

東南アジアの食文化と伝統的な使われ方

タイのトムヤムスープやカレー、ベトナムの肉料理など、レモングラスは香味野菜のように使われます。太い茎をたたいて香りを出し、煮込みの途中で取り出す方法もあれば、柔らかい部分を細かく刻んで炒め物やたれに混ぜる方法もあります。辛味や酸味のある料理に重ねると、青々しい香りが全体を引き締めます。

一方、乾燥葉を湯で抽出した飲み物は、各地で日常のハーブティーとして親しまれてきました。伝統的には休息時や食後の飲み物として利用されることもありますが、地域ごとの経験的な使い方と、現代の臨床研究で確認された効果は分けて考える必要があります。香りや味を楽しむこと自体が、この植物の大きな魅力です。

レモングラスの香りと主要成分

レモングラスの特徴的な香りには、精油中のシトラールが深く関わっています。シトラールはゲラニアールとネラールという二つの異性体を合わせた呼び名で、明るいレモン調の香りを形づくります。ほかにもミルセンなどの揮発性成分が報告されています。葉を刻む、折る、加熱するといった操作で香りの立ち方が変わるのは、揮発性成分が空気中へ広がるためです。

ブラジルで市販された乾燥葉や生葉を分析した研究では、抽出した精油中のゲラニアールとネラールの割合に試料ごとの差が認められました。品種、産地、収穫時期、乾燥・保管方法などによって香りが変わるため、すべてのレモングラスが同じ成分比率というわけではありません。ハーブティーに含まれる成分と、高濃度に抽出された精油の成分量も同一ではありません。

葉には精油成分以外にもフェノール性化合物などが含まれます。ただし、食品として少量使う場合に特定の成分をどれだけ摂取するかは、調理方法や使用量で変わります。成分の名前だけから健康への作用を決めつけず、研究で使われた抽出物や濃度まで確認する姿勢が大切です。

レモングラスの作用・効果に関する研究

レモングラスの抽出物や精油については、試験管内での抗菌活性や抗酸化に関連する反応などが研究されています。2015年の総説では、伝統的な利用とともに、さまざまな成分の基礎研究が整理されています。ただし、実験室での結果が、そのまま通常の食事やお茶を飲む人の疾病予防・治療効果を意味するわけではありません。

香りを用いた小規模なヒト研究もあります。2015年に健康な男性40人を対象とした研究では、レモングラス精油の香りを短時間吸入した群で、実験的な緊張場面の主観的な不安が一時的に低下したと報告されました。一方、医療機関の情報では、レモングラス茶を飲むことで不安や睡眠に明確な改善が得られたとは示されていません。香りの吸入試験と、お茶の飲用は方法も対象も異なります。日常の飲用を医療行為の代わりにしないことが大切です。

生のレモングラスと乾燥葉の違い

生のレモングラスは、茎を切ったときの青々しい香りが魅力です。根元に近い部分は比較的厚みがあり、たたいてスープに加えると香りが移ります。外側の硬い葉は口当たりが悪いため、料理によっては煮出したあとに取り除きます。細かく刻んで食べる場合は、繊維が硬くない内側の部分を選びます。

乾燥葉はかさばりにくく、ハーブティーや煮出し用に便利です。乾燥によって香りの印象が変わり、保存中にも徐々に弱くなります。生葉と乾燥葉は同じ重量で置き換えず、香りを確かめながら使うとよいでしょう。

レモングラスのおいしい使い方

ハーブティーに:食品用の乾燥葉を適量ポットに入れ、熱湯を注いで香りが立つまで数分蒸らします。濃さは商品表示を参考に調整し、最初は薄めから試すと香りをつかみやすくなります。ミントやしょうがと合わせてもよく、砂糖を加えずに爽やかな風味を楽しめます。

スープや煮込みに:生の茎の根元を洗って数か所たたき、スープやカレーに加えます。レモングラスの香りはココナッツミルク、鶏肉、魚介、きのこ類などと好相性です。硬い茎は食べる前に取り出し、香りが強すぎるときは煮込む時間を短くします。

炒め物やたれに:柔らかい内側を細かく刻み、にんにくやしょうがと一緒に炒めて香りを引き出します。魚醤や柑橘の果汁と合わせると、東南アジア風の味わいになります。繊維が気になる場合は大きめに切って香りづけだけに使い、最後に取り除きます。

選び方と保存のポイント

生の茎は、根元に張りがあり、ひどい変色やぬめりがないものを選びます。葉先が多少乾いていても根元が健全な場合はありますが、異臭やカビがあれば使用を避けてください。購入後は乾燥を防いで冷蔵し、状態を見ながら早めに使い切ります。長く保存する場合は、用途に合わせて切り分けて冷凍する方法もあります。

乾燥葉は、湿気、直射日光、高温を避けて密閉保存します。袋を開けたときに香りが弱くなっていたり、湿気による固まりやカビが見られたりする場合は使用を控えます。料理用の葉と、香料・芳香浴向けの精油は別の商品です。飲み物には必ず食品として販売されている葉を使いましょう。

利用するときの注意点

料理に使う通常の量と、濃い抽出物や精油を大量に摂取することは区別してください。レモングラス精油は成分が濃縮されており、ハーブティーの代わりに飲むものではありません。原液を皮膚に直接塗ると刺激やかぶれの原因になることがあり、香りを利用する場合も製品の使用方法を守ります。

メモリアル・スローン・ケタリングが公開する情報では、レモングラスの過剰な摂取に伴う有害反応や、精油による皮膚症状などが紹介されています。妊娠中・授乳中の方、服薬中の方、持病のある方は、濃縮製品や習慣的な多量摂取を避け、医療者に相談してください。イネ科植物などにアレルギーのある方も慎重に扱い、体調に異変を感じたら使用を中止しましょう。

※参考文献・学術資料:

Royal Botanic Gardens, Kew. Cymbopogon citratus (DC.) Stapf, Plants of the World Online.
https://powo.science.kew.org/taxon/396896-1

Royal Botanic Gardens, Kew. Cymbopogon citratus, General Information.
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:396896-1/general-information

Negrelle RRB et al. Evaluation of the Chemical Composition of Brazilian Commercial Cymbopogon citratus Samples. Molecules. 2008.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18794790/

Ekpenyong CE et al. Ethnopharmacology, phytochemistry, and biological activities of Cymbopogon citratus extracts. 2015.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25986281/

Goes TC et al. Effect of Lemongrass Aroma on Experimental Anxiety in Humans. J Altern Complement Med. 2015.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26366471/

Memorial Sloan Kettering Cancer Center. Lemongrass.
https://www.mskcc.org/cancer-care/integrative-medicine/herbs/lemongrass

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